株式会社土屋合成は、富岡市で精密プラスチックの射出成形加工を行う会社です。筆記用具を中心とした樹脂部品を月産300品目、6,000万個を生産しています。
土屋合成では、現社長(土屋直人氏)が就任した2006年からIoTを駆使したシステムを構築し、加工から生産管理までトータルで自動化を進めた結果、その取組が評価され「DXセレクション2023」(経済産業省)で準グランプリを受賞しました。
DX推進の効果は業績にも反映されています。社長就任以来、売上高は6.3倍、従業員数は2.8倍となり過去最高益を更新中です。加えて製品精度も上がり、デジタル化の推進が顧客への安心感にも繋がっています。
〇典型的な零細企業のデジタル化のきっかけ
土屋社長の入社当時は、人海戦術が主体の昔ながらの工場でした。
そんな工場がDXに取り組むきっかけとなったのは、単調で辛い手作業工程が増大していた状況に「これは人間がやらなくてはいけない仕事なのか?」という疑問を持ったことでした。
そこでまず、成形品のゲートカット(※)を手作業から自動化するため、ゲートカットロボットの導入を進めました。経営層からは「過剰投資ではないか」、現場からは「仕事がなくなるのでは」という不安と反対の声があったものの、結果として作業軽減や作業効率アップにつながり、自動化に賛同する社員が増えていきました。ここからロボットが得意な仕事は自動化し、緻密な作業や知的労働など人がやるべき仕事で人が活躍できる環境を整えていきました。
現在は生産管理においても稼働状況を遠隔でリアルタイムにチェックできるシステムを構築し、「24時間停まらない工場」として稼働しています。
※ゲートカット:「ゲート」は射出成型機から金型へ樹脂を流しこむための入り口。成形時には金型へ樹脂を流し込むための通り道にも樹脂が残り、成形品と一緒に冷えて固まるため、ゲート部分で成形品と不要な樹脂をカットする必要がある。
〇土屋合成のDX部門を独立させ新会社「T-TECH」を設立
土屋合成でのDX推進で培ったデジタル活用のノウハウと実績を異業種との連携や新たなビジネスに繋げるため、土屋合成のDX部門を独立させた株式会社T-TECH(土屋直人代表取締役)を設立しました。
株式会社Kort Valutaとは、決済機能と健康管理機能を搭載したリング型ウェアラブルデバイス「TwooCa Ring」を利用して介護事業の現場で起こっている問題に対する解決方法を提供するとともに、その実証実験を実施しました。「TwooCa Ring」は専用アプリで睡眠状態、心拍数、体温等が管理できるため、工場や建設現場の作業者、ドライバー、アスリートなどの健康管理、医療現場などで幅広く活用できると期待されています。また、将来的には収集した健康データや生態認証機能を活用した新しいサービスを展開できるのではないかと考えています。
なお、「TwooCa Ring」を活用した介護現場での実証プロジェクトは、令和4年度「群馬県デジタルイノベーション加速化補助金事業」に採択されました。
このようにT-TECHでは、自社のノウハウを生かした新たなビジネスや、社会のDX推進のために「未来投資プロジェクト」に取り組んでいます。
〇未来投資プロジェクト① ―スマホベースの「ものづくり」―
そのひとつが、SBM(スマートフォン・ベースド・マニュファクチュアリング)です。
土屋合成では、・・・